マル暴になるための基本ルート
マル暴になるための入口は、基本的に警察官になることだ。
「マル暴」という名称の警察官採用試験が存在するわけではない。まず都道府県警察などの採用試験を受けて警察官となり、その後の配属や異動によって、暴力団対策を担当する部門で勤務する道がある。
警察庁の組織上も、暴力団対策は組織犯罪対策部の重要な業務として位置付けられている。さらに、暴力団犯罪だけを単独で見るのではなく、薬物・銃器、特殊詐欺、犯罪収益、国際的な犯罪組織などとの関連まで含めて組織犯罪として捉える方向が明確になっている。
そのため、昔ながらの「暴力団事件だけを追う刑事」というイメージだけでマル暴を考えると、現在の仕事の実態を見誤りやすい。
まず警察官採用試験に合格する
最初の関門は当然ながら警察官採用試験だ。
都道府県警察の警察官採用試験を受験し、筆記試験、論文、面接、体力検査など、各自治体が定める選考を通過する必要がある。
ここで重要なのは、マル暴志望だからといって、最初から暴力団捜査だけを専門的に勉強すればいいわけではないことだ。
警察官には法令知識、捜査手続、文書作成、コミュニケーション能力、現場対応力など幅広い能力が求められる。
むしろマル暴を目指すのであれば、刑法や刑事訴訟法などの基本的な法律知識を身につけておくことが重要になる。
警察学校を経て現場へ
採用後は警察学校で必要な知識や技能を学ぶ。
警察学校では、法律、逮捕術、拳銃、交通、警察実務など、警察官として必要な基礎を身につける。
その後、実際の警察署などで勤務経験を積んでいく。
ここがマル暴を目指すうえで非常に重要なポイントだ。
いきなり「今日からマル暴」という形になるとは限らない。地域警察などの現場経験を積み、警察官としての基本的な職務能力を身につけたうえで、刑事部門などへ進むケースが考えられる。
つまり、
警察官採用→警察学校→警察署などで勤務→刑事部門などへの異動→組織犯罪・暴力団対策を担当
という流れが、一つの典型的なイメージになる。
ただし、実際の人事や配属は各都道府県警察の制度や人事運用によって異なるため、「何年勤務すれば必ずマル暴になれる」といった全国共通のルールがあるわけではない。
マル暴に向いているのはどんな人か
マル暴というと、体格がよく、強面で、度胸がある人物を想像する人も多い。
しかし、実際の組織犯罪捜査で重要なのは、それだけではない。
むしろ重要なのが情報を整理する能力だ。
組織犯罪では、人物、会社、資金、車両、電話、契約、口座など、さまざまな情報が絡み合う。
警察庁も組織犯罪対策について、犯罪組織に関する情報の集約・分析や、犯罪収益への対策などを重視している。
つまり、腕力だけで事件を解決する仕事ではない。
地道な資料分析、関係者からの事情聴取、裏付け捜査、関係部署との連携などを積み重ねる必要がある。
個人的な視点でいえば、マル暴に向いている人物を考える際には「怖そうな人」よりも「感情をコントロールしながら淡々と仕事を続けられる人」のほうがイメージに近い。
コミュニケーション能力も重要
組織犯罪捜査では、多様な人物と接する場面が出てくる。
そのため、単純に人と話すのが得意というだけではなく、相手の話を聞き、情報を整理し、必要な事項を確認する能力が重要になる。
強い態度を取れば捜査が進むというものでもない。
むしろ、相手の言葉を冷静に聞き、事実関係を一つずつ確認していく姿勢が求められる。
警察の仕事は証拠と手続に基づいて進める必要があるため、「度胸」だけでは成立しない仕事だ。
マル暴は暴力団だけを相手にするわけではない
現在の組織犯罪対策はかなり広い。
警察庁の組織犯罪対策部では、暴力団対策に加えて薬物・銃器犯罪、国際犯罪、犯罪収益移転防止なども扱っている。
また、警察庁の採用資料では、暴力団をはじめとする犯罪組織への対策について、暴対法に基づく規制、マネー・ローンダリング対策、薬物銃器対策、国際連携などを組み合わせた活動が紹介されている。
そのため、マル暴を目指すなら、暴力団に関する知識だけでなく、金融犯罪、会社法務、資金洗浄、特殊詐欺、薬物犯罪などへの理解も役立つ。
「マル暴になりたい」なら今から何を勉強する?
学生なら、まず法律系の基礎を固めるのが現実的だ。
特に刑法と刑事訴訟法は、警察官を目指すうえで重要な分野になる。
加えて、ニュースを見る際にも「誰が悪い」という表面的な見方だけではなく、
「どの犯罪が成立するのか」
「どの証拠が必要なのか」
「組織内で誰がどの役割を担ったのか」
「資金はどこからどこへ流れたのか」
と考える習慣をつけると、刑事捜査を見る視点が変わってくる。
組織犯罪では、人間関係と金の流れを把握することが捜査上の重要な要素になるからだ。
強面である必要はない
マル暴についてよくある誤解が「強面でなければなれない」というものだ。
実際には、顔つきや体格だけで配属が決まるわけではない。
警察の仕事は組織として行われるものであり、捜査には法令、証拠、情報分析、書類作成、関係機関との連携など、多数の能力が必要になる。
むしろ外見的なイメージだけでマル暴を語ると、組織犯罪捜査の本質から離れてしまう。
マル暴を目指すなら「刑事になる」ことを意識する
マル暴を目指す場合、最初から「マル暴」という一点だけを見るより、「優秀な刑事警察官になる」という視点を持ったほうが現実的だ。
事件を構造的に見る力、法律を理解する力、証拠を積み上げる力、関係者から情報を得る力、長期間にわたる捜査を継続する力。
こうした能力は、組織犯罪捜査にも直結する。
警察庁の資料でも、組織犯罪対策は犯罪組織の実態を捉えながら、暴力団、薬物、銃器、国際犯罪、犯罪収益などを横断的に扱う分野として説明されている。
まとめ
マル暴になるための一本道の試験があるわけではない。
基本的には警察官として採用され、警察学校などで基礎を身につけ、現場経験を積み、その後の配属や異動によって組織犯罪・暴力団対策を担当する道がある。
そして現在のマル暴は、単純に「暴力団を取り締まる刑事」というだけではない。
暴力団対策、特殊詐欺、薬物・銃器、犯罪収益、マネー・ローンダリング、国際的な犯罪組織など、複雑化する組織犯罪を総合的に捜査・分析する専門性が求められる。
マル暴を本気で目指すなら、強さを演出することより、法律を理解し、情報を分析し、証拠を積み上げ、冷静に捜査を続けられる警察官になることが重要だ。
